主な研究グループ

当教室が行ってきた、もしくは行っている研究活動

当教室では「最良の精神医療を相模原から世界へ」という目標のもと、臨床のみならず研究活動も積極的に行っています。精神科領域全般に関して研究は行っていますが、相模原市という地域の特色を生かした地域連携・多職種連携に関する研究も行っているのが特色です。

  • 精神疾患は再発頻度が高く、入院を要した人の再入院や通院中断などによる治療中断がしばしば起こります。精神疾患のある人の生活の質向上、寛解の維持のため、治療継続を阻害する要因についての調査研究を行っています。

    また、多剤処方の改善を目標に多職種で協議しながら取り組んでいます。その一環として頓用薬に着目し、当教室では2022年7月より当院精神神経科病棟へ入院した人を対象として薬剤部を中心に多職種で頓用処方モニタリングを開始しました。頓用処方モニタリングを行うことで、頓用薬やその他の治療内容についてどのような変化が生じるのかを研究として検証しています。

    さらに、多施設共同研究としてうつ病や統合失調症のガイドラインを全国的に普及させるプロジェクト(EGUIDEプロジェクト)にも参加し、診療の質に関する研究を行っています。

  • 北里大学病院精神神経科は神奈川県相模原市より委託を受けて相模原市認知症疾患医療センターとして地域の認知症のある人への支援に取り組み、認知症のある人、家族、ケアに携わる人たちに還元できるように研究も活発に行っています。認知症疾患医療センターならではの地域との連携を生かして、地域における認知症診療の実態に関する調査研究や、認知症のある人に対する抗精神病薬の処方の実態と関連する要因についての研究などを行ってきました。今後も地域の認知症のある人の支援となるべく研究を進めていく予定です。

  • 当科では多職種が協働して訪問診療や訪問看護を行っており、これは大学病院精神科としては全国的にも類を見ない試みです。大学病院でこれらの活動を継続することに関して、様々な利点を感じる一方で、多くの課題も残されているため、これらを整理し、臨床だけでなく教育・研究を担う大学病院における持続可能性を研究として検証を行っています。

  • 当科では専門外来として児童外来があり、近年では発達障害のある児に接する機会が増えています。心理社会的治療だけでなく、必要に応じて薬物療法を行うこともありますが、薬物選択は個別性が高く、有害事象への留意も重要です。当院外来の処方実態調査やレセプトデータを用いた処方実態調査を行い、薬物療法の適正化を図ることを目標として研究を行っています。

  • 地域の中核病院という性質上、他院からの依頼にも積極的に応需し当院におけるECTは年々件数が増加しています。ただしECT自体がもつ乱用の歴史を繰り返さないためにも、適応を十分検討し、「より安全で効果的な治療」をテーマに、発作の増強法、治療手技、ECT麻酔、身体合併症患者への対応など日々の臨床の中で生じる課題を中心に研究をしてきました。メンテナンスECT、ECTナース、ECTパス、多職種連携会議という取り組みもしています。日本総合病院精神学会のECT研修施設に認定されています。

当教室員が筆頭著者の学術論文(2022年以降)

  1. Kimura T, et al. Asenapine versus olanzapine for the treatment of nausea and vomiting in patients with cancer: A retrospective study.
    Neuropsychopharmacol Rep. 2024 Mar;44(1):158-164. doi: 10.1002/npr2.12412.
  2. Inada K, et al. Factors associated with death, hospitalization, resignation, and sick leave from work among patients with schizophrenia in Japan: a nested case-control study using a large claims database. BMC Psychiatry. 2024 Jan 3;24(1):22. doi: 10.1186/s12888-023-05474-5.
  3. Saito Y, et al. Analysis of Concomitant Medications Prescribed with Antipsychotics to Patients with Dementia. Dement Geriatr Cogn Disord. 2023;52(4):222-231. doi: 10.1159/000531240.
  4. Kyou Y, et al. Influence of Psychotropic Pro Re Nata Drug Use on Outcomes in Hospitalized Patients with Schizophrenia. Clin Psychopharmacol Neurosci. 2023 May 30;21(2):332-339. doi: 10.9758/cpn.2023.21.2.332.
  5. Kyou Y, et al. The characteristics of discharge prescriptions including pro re nata psychotropic medications for patients with schizophrenia and major depressive disorder from the survey of the "Effectiveness of guidelines for dissemination and education in psychiatric treatment (EGUIDE)" project.
    Ann Gen Psychiatry. 2022 Dec 26;21(1):52. doi: 10.1186/s12991-022-00429-8.
  6. Inada K, et al. Development of individual fitness score for conformity of prescriptions to the "Guidelines For Pharmacological Therapy of Schizophrenia". Neuropsychopharmacol Rep. 2022 Dec;42(4):502-509. doi: 10.1002/npr2.12293.
  7. Muraoka H, et al. Characteristics of the treatments for each severity of major depressive disorder: A real-world multi-site study. Asian J Psychiatr. 2022 Aug;74:103174. doi: 10.1016/j.ajp.2022.103174.

当医局員の学会発表(2022年以降)

  1. 丹野博行、他:アリピプラゾール持効性注射製剤による皮膚症状が疑われた統合失調症の一例. 第120回日本精神神経学会学術集会. 2024年6月、札幌
  2. 鈴木龍太郎、他:北里大学病院における精神科訪問診療の実態調査. 第120回日本精神神経学会学術集会. 2024年6月、札幌
  3. 廣岡孝陽、他:令和6年版医師国家試験出題基準の改定と精神科領域における卒前教育の見直し. 第120回日本精神神経学会学術集会. 2024年6月、札幌
  4. 鈴木龍太郎、他:強迫関連現象の出現をきっかけに、不安・コミュニケーション・感覚の特異性を中心に再評価し、自閉スペクトラム症への診断再考に至った8歳男児の一例.第64回日本児童青年精神医学会総会、2023年11月、青森
  5. 小野剛、他:母子共にASD特性を有する親子が、情緒的交流を回復させて母子関係の危機を乗り越えた一例.第63回日本児童青年精神医学会総会、2023年11月、青森.
  6. 清水雄一郎、他:産科と共同し胎児心拍数図の確認を行い安全に修正型電機けいれん療法を施行できた一例. 第36回日本総合病院精神医学会総会. 2023年11月、仙台
  7. 朝倉崇文、他. 急性期総合病院に診療機能移行後のアルコール症専門外来の現状と課題. 第36回総合病院精神科学会学術総会.仙台. 2023年11月、仙台
  8. 三宅槙、他:レンボレキサントによる薬剤性せん妄が疑われ、中止によって改善を認めた1例.第33回臨床精神神経精神薬理学会学術集会、2023年9月、愛媛
  9. 西川大曜、他: 抗精神病薬の増量で口腔の不随意運動が改善した、遅発性ジスキネジアとの鑑別に苦慮した統合失調症の一例.第33回臨床精神神経精神薬理学会学術集会、2023年9月、愛媛
  10. 釼持幸男、他:たこつぼ型心筋症から脳塞栓症を生じたうつ病の1例.東京精神医学会第128回学術集会,2023年7月,東京
  11. 上村幸正、他:多飲水による低ナトリウム血症に横紋筋融解症を合併した統合失調症の1例.第119回日本精神神経学会学術集会.2023年6月、横浜
  12. 朝倉崇文、他:依存症・嗜癖障害を有する者に対する支援者を対象とした研修の妥当性、有効性の探索的研究 . 第38回日本ストレス学会学術総会. 2022年11月、オンライン
  13. 神谷俊介、他:「自傷する子どもからみた家族関係の評価が治療に有効であった一事例」,第63回日本児童青年精神医学会総会、2022年11月、長野
  14. 髙木裕昭、他:潰瘍性大腸炎の治療経過中にWernicke脳症を発症した1例.東京精神医学会第125回学術集会、2022年7月、東京